ソメティメスでいいじゃない?

基本的にはだらだらと思いのままブログを書く人です。 そのほか うつ病に関して、節約、ミニマリストのブログもやってます。 ぜひお役立てください! https://sometimes32.com/takenotthing

林透の話file1

後藤の趣味の話を聞いた時、つくづく悪趣味だと思った。


初めての側近だった。

最悪の一日になった。
おそらく留依にとっても、だ。

何人かの家を回ったあと、最後の場所が留依の家だった。
一等地の綺麗なマンションだった。
後藤は土足のまま部屋へと入った。
本当になにもない部屋だった。
人が住んでいるのか、疑うほどだった。

後藤は基本待たない。
部屋に留依はいなかった。
帰るかと思ったらそのままソファに座った。
やはり留依は特別なのだ、とわかった。


20分程が過ぎた時に玄関のドアが開く音がしてリビングのドアが開いた。

最初に目があったのはドアの近くに立っていた俺とだ。
顔を見た瞬間、「なるほどな」と思った。
そう思ったのもつかの間まで、すぐさま留依は逃げ出すそぶりを見せた。

後藤が「おい」と声を発し、俺はそれに反応して、留依の腕を掴む。細い。
そして、土のにおい、がした。
そして、嗅ぎなれているあのにおいも。
後藤も俺も、留依に起こったことがなにかわかった。

留依の腕ががたがた震える、手首のあとをみて、大体の予想がつく。

留依が異常に怯えてるのがわかった。
後藤が独占欲が強いことは知っていた。

できるだけ俺も平然を装っていたが動揺した。

その先は後藤と留依の話だ。
俺はあまり話たくない。

ただ、ひとつ俺にトラウマができた。
「鎮痛剤」という言葉を聞くと、動揺してしまうということだ。


それは少しの間の出来事で、後藤に電話がかかってきて、部屋に留依と俺だけになった。

留依は棚へと向かいごそごそと何かを探し始めた。

俺は何をするわけでもなく見ていた。

後藤が部屋に戻ってくる。
びっくりするくらい優しい声で後藤は「なにしてるの」と留依に尋ねた。

留依のその時の怯えた顔と怯えた声とは俺は一生忘れられないと思う。
留依は震える声で「鎮痛剤」と答えた。