新山慎太の話file1
最初は憧れのような気持ちだった。
後藤先輩はサッカー部のエース的存在だった。
華やかな雰囲気の顔立ちなのに、なにか陰鬱な雰囲気もあって、惹かれてしまった。
自分でもだんだんと自分の気持ちに気づき始めると噂も立ち始めた。
後藤先輩の周りの友達はからかうような感じだったけど、先輩自身は無関心な目で僕を見ていた。
ある日後藤先輩の友達から、後藤の家で遊ぶからお前も来いと言われた。
正直、うれしくてのこのこ付いて行った。
部屋には後藤先輩、先輩の友達、そして
僕の上には知らない男がいた。
先輩達はへらへら笑ってた。
後藤先輩は何も映ってないような無関心な目で「あんまり汚すなよ」とだけ口にした。
家に帰って精神が錯乱した。
生まれて初めて心の底から後悔をした。
次の日の学校の帰り道、後藤先輩がいた。
「学校来たんだ、すごいね」
後藤先輩は少し笑っているように感じた。
身体が震えるのがわかった。
シカトして立ち去ろうとした時に後藤先輩が僕の左の手首を掴んだ。僕の袖を捲る。包帯が巻かれた僕の腕を見て先輩が聞いてくる。
「なあ、これ」
冷汗が止まらない。
「どんな気持ちだった?」
先輩のその言葉に恐怖し、
立っているのが限界だった。
「僕のこと、嫌いなら、もう、関わらないでください」
情けないくらいに僕の声は震えていた。
「わかった。関わらないからさ、一回お前の家に行っていい?」
先輩は僕の腕を離さない。
「俺一人だよ。お前んちならいいだろ」
わけがわからなかった。
本当は断るべきだ、そうはわかっていた。あんなことをされたのに。でも心のどこかでまだ先輩のことを想っている自分もいて、笑えるくらい悲しかった。
先輩は家に入ると、あるものを僕に見せた。
普段は見えないところ。
内ももの部分だ。
声が出なかった。
心臓が止まるかと思った。
一瞬、なにがなんだかわからないほどだった。
酷い、なんて言葉では足りない。
先輩の顔は歪んでいた。
今でも、その先輩の表情をどう表現したらいいのかわからない。
目は不気味に笑っているのに涙が出ていて、口角は上がっている。
その口からはこんな言葉が出てきた。
「なあ、お前はその傷つけた時、どんな気分だったの?俺わかんねーの。こんなぐちゃぐちゃにしてんのにさ、その時の記憶ねーの。教えてくれない?どんな気持ちなの?」
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